GICではミャンマー人に特化した、日本企業向けの海外人材採用支援サービスを提供しています。日本語および英語に堪能なミャンマー人高度人材(理系・文系)、特定技能人材などの人材採用が可能です。

今回は、外国人材活用の先駆者である、コンピューターサイエンス株式会社 代表取締役社長 安田 秀敏 (やすだ ひでとし) 氏と17年にわたるグローバル人材採用経験がある当社代表取締役社長 岩永 智之 (いわなが ともゆき) が海外人材採用事例の一つとして対談した内容です。

外国人材採用方法、採用時の注意事項、受入企業の体制準備などをはじめ、採用後の教育、人事制度、位置付けなどのグローバル人事や、外国人材活用メリットなどについて実体験を基づいた対談です。

動画は、2021年9月3日に開催した「外国人材活用の全てがわかる特別セミナー」の内容です。動画とあわせてQ&A記事をご覧ください。

「敬称略」

岩永:貴社の事業内容について教えてください。
安田:事業領域は①システム開発、②システムインフラ構築、③セキュリティ・ソリューションの3つです。「システム開発」は一般的なIT会社と同様に、要件定義から設計、製造にいたる全てのフェーズを担当する事が出来ます。SIとしてシステムの全部(もしくは一部)を一括してお請けする事もありますし、大規模開発では一部のサブシステムをSESとして技術者を派遣し対応します。また、「システムインフラ構築」ではメインフレームからPCに至るまでのインフラ設計から構築、運用設計を行います。最後に「セキュリティ・ソリューション」はお客様のセキュリティポリシーの策定やIT全般統制などコンサルティング分野から運用設計、監査対応など幅広くご支援しています。またZero-Trust製品などセキュリティ関連プロダクトも取り扱っています。

岩永:現在の外国人の雇用人数(国籍も含めて)を教えてください。
安田:総計で33名。国籍は、ミャンマー人14名、中国人9名、韓国人9名、インド人1名。性別は、男性19名、女性14名。社員区分は、日本国内28名、現地(海外)5名。

岩永:外国人材を初めて活用されたのはいつですか?そのきっかけは何でしたか?
安田:2004年に定期採用として中国人を採用したのが、当社にとって初の外国人採用です。彼は在日の中国人で日本人と同様に大学在籍中に新卒として応募してきまして、当社の入社試験に合格し、4月に入社しました。他の日本人と共に3か月間の新人教育を受け、半年間のOJTを終了し、プロジェクト勤務をしていました。とても積極的で礼儀正しい青年でした。在日ということもあり、日本語に関しては全く違和感がありませんでしたが、逆に母国語の中国語が完ぺきではなかったのです。母国語の中国語をマスターしたいということで、2007年に会社を辞め語学留学をしました。また2004年頃からは国内の中国系企業の技術者に、当社の仕事の一部をお手伝いいただくなど、パートナー技術者としてプロジェクトに参画頂く事が多くなってきました。そして2008年には仕事の一部を外国に発注する、いわゆる“オフショア”も始めました。

岩永:国籍が異なる外国人を採用されている場合、それぞれの国民性や教育に注意すべき点等を教えてください。
安田:とても難しい質問です。一概に国による違いとして話してしまうと、ステレオタイプ的な受け取り方をされる方もいらっしゃるので…国による違いよりも、大切なことは「一人ひとりの個性をみて対応すべき」だという事です。なお、国による違いについて、研究しまとめた方がいらっしゃいます。私も彼女の本を読んでとても参考になったと感じています。
著者:エリンメイヤー「The Culture Map」日本語訳版:「異文化理解力」Amazon:1,980円

岩永:外国人を雇用しようと思った際にまず企業側で準備しておいた方が良いことは何でしょうか?
安田:どんな背景を持った外国籍の方を雇い入れるかによって異なります。以下の表は日本適応度とIT専門性の高低によるマトリクスです。

日本適応度が高い層に関しては特別な準備は必要ないと考えます。日本適応度が低く、既にITの現場で活躍しておられる技術者(多くの場合、海外で活躍しておられる技術者や海外企業の日本法人に赴任している技術者)に関しては、当社としては雇用の対象としていません。パートナーとして仕事を依頼する対象としています。準備が必要と考えるのは、上記マトリクスの「BB」、海外で採用し国内で就業して頂く場合です。具体的には、出入国時の手続き関連、住居や家財の手配、印鑑作成を含む銀行口座開設や役所への届け出などのサポートが最低限必要と考えます。パスポート申請、在留資格、VISA、渡航手続き、住居契約、来日時にすぐに必要な家財(布団類)印鑑作成、銀行口座開設、役所への届け、公共交通機関の利用ガイド(まずは自宅から会社まで)などです。

岩永:採用面接時に特に注意されていることは何でしょうか?
安田:共通(国籍、海外/国内採用を問わず)
・ITに対する興味の有無
 ITに対して興味が強いか否か、IT関連の仕事が好きか否か
 コロナ禍に於いてITは比較的安定した業種と見る向きも多く、興味よりも安定を優先する学生も多い
・ITに関する適正の有無
 論理的な解釈(思考)ができるか否か、論理的な説明ができるか否か
・内省できるか否か
 失敗や上手くいかなかった事に対して、その原因を探求し改善ができるか否か(自己変革できるか否か)
・当社に対する興味の有無

海外採用
前提として…ITも日本語も学んできた学生を探すのは至難。日本語に興味があり日本語を学んできた学生は、ほぼ文系出身。大学でコンピューター関連を学んだとしても、所詮学生レベルでプロとして通用するほどの技術力ではない。然らば、日本語に興味があり、多少なりとも学習してきた学生にITを教えるのと、ITには興味はあるがプロ技術者としては未熟な学生に日本語とITを教える事のどちらが効率的かと考えた場合、日本語ができる学生にITを教える方がはるかに効率的と考える。
・日本もしくは日本語に対する興味の有無と習熟度
・日本語(ビジネスレベル)習得の可能性

岩永:採用面接時に良くある質問は何でしょうか?
安田:国内採用の日本人の場合、「どんな人が活躍しているか?」と活躍している人の特徴をよく聞かれます。海外採用の場合は就業条件ですね。特に住居の提供や補助など福利厚生と給与の質問が多いです。

岩永:外国人材新入社員の日本人新入社員の教育に違いがありますか?課題やその工夫など教えてください。
安田:国内採用(留学生)に関しては全く違いがありません。同じカリキュラムで3ヶ月間の新人教育を受けて頂きます。その後、部門配属となり12月までの6ヶ月間はOJTとしてプロジェクト業務に従事して頂きます。海外採用に関しては、N2以上の資格取得者は国内採用と同じで、来日後4月から日本人と同じカリキュラムの新人研修を受講して頂き、その後6ヶ月間のOJTとなります。日本語能力検定N2未満の方は、現地で約1年間の日本語研修とIT研修を受講して頂きます。その後、N2が取得できれば来日し、部門配属後に6ヶ月間のOJTを開始します。

岩永:職場での日本語の言葉の壁という観点はいかがでしょうか?
安田:有ります!たとえN2を取得したとしてもビジネスレベルの日本語かと言うとそうではありません。N1取得済みの留学生やキャリア採用者でも十分でない場合が多くあります。単純に外国籍社員本人の日本語文法や語彙力の問題である場合もありますが、“壁”をつくっているのは受け入れる日本人である場合もあります。例えば日本人並みの日本語力を求めている場合や、助詞の使い方が間違っているだけで、「理解できない」や「日本語が下手」、「ビジネスレベルでない」と決めつけている場合がある様に思います。受入れる日本人側の感受性(相手の真意を受け止める態度)にも問題があると思います。日本人でも完璧な日本語を話す書く事は容易ではないです(誤用している日本人も多くいます)し、ビジネスレベルと言っても何がどのくらいできればよいか明確に定義できている日本人もまず居ないでしょう。次のような事柄に気を付けると、コミュニケーションの質が上がると思います。

✓指示は明確、具体的に
✓指示は口頭だけではなく、書き出して渡す
✓文字だけではなく、絵を描くなどの工夫
✓伝えるのではなく、相手に理解できるようにコミュニケーションを取ること
✓口頭だけではなく、行動で見せること
✓仕事の全貌と今の作業はどのような関連性があるのかを説明すること
✓ミスに対して「なぜ、なぜ、なぜ」を問い詰めることではなく、正しいやり方を丁寧に説明すること
✓「知っている前提」から「知らない前提」に切り替える。基本から丁寧に教える
✓(例えば、報連相では、どのタイミング、どのようなこと、なぜそれをして欲しいのか)
✓相手に興味を持ち、仕事以外のコミュニケーションも取る

!!! 面白い例 !!!(笑い話として…)
私の友達の中国人の話!
その友達は流暢な日本語を話します。語彙も広くとても日本語が上手いと感じます。その彼は中国国内で日本語を勉強してから来日したそうです。来日当初は日本人が話す言葉がわからずに、とても困ったと言っていました。その彼曰く、例えば友達を食事に誘う時、「食事に行きませんか?」と中国で習いました。でも日本に来てお昼時になると、周りの人から「飯食いに行こうぜ!」と言われて、意味が全く理解できずに困りました。 日本語学校などでは、きれいな日本語を教えています。だから私達もきれいな日本語を使う努力が必要だと感じました。

岩永:日本人と比べて、外国人は時間にルーズとも言われがちですが、その辺はどうでしょうか?例えばよく遅刻するとか、納期を守らないなど困っていることがありますか?
安田:ほぼありません。みんな真面目な社員たちです。

岩永:貴社における外国人従業員の役割や位置づけを教えてください。
安田:特別な役割はありません。日本人と同様に技術者として就業して頂いています。 ただし、オフショア開発など海外に仕事の一部を発注する場合は、ブリッジSEとしての役割は期待できますし、将来、海外現地法人を設立した場合は祖国に戻って頂いて、後進の育成やマネージメントとして活躍する事を期待しています。

岩永:外国人を雇用することで生まれるメリットを教えてください。
安田:
もちろん少子高齢化が進む日本に於いては人材不足の解消に役立ちます。しかし、それ以外のメリットの方が大きいと考えます。例えば、外国籍社員を”混ぜる“事による反応(良い反応も悪い反応も含めて刺激になる)、日本人だけでDiversity&Inclusionを推進するよりも、わかり易い事例が身近に生まれます。

岩永:貴社特有の外国人人事評価制度がありましたら教えてください。
安田:国内に於いて外国人のみを特別に評価する制度や仕組みはありません。同じ人事制度の下で運用しています。

岩永:今後も外国人材活用を続けたいと思いますか?
安田:Of course, Yes! 今はまだ全社員の7%弱ですが、少なくても3割くらいが外国籍になれば、当社が目指すCognitive Diversity(認知の多様性)とInclusionが進みやすくなると思います。半分くらい外国籍社員でも良いと思っています。

岩永:GICのサービスを利用して良かった点。競業他社との優位点等を教えてください?
安田:先ず最大の利点は優秀な学生が多く集まる点です。また募集から採用に至るすべてのプロセスでサポートして下さる点です。現地法人を持たない当社にとっては、非常にありがたいサポートです。また、ミャンマーでの現地採用に関してはGIC社以外の競合他社が見当たりません。(中途採用なら数社あるようですが…)GICさん以外でミャンマー現地採用をするとなれば、独自に大学などとのコネクションを開拓するか、SNSなどを利用して独自に募集する以外に方法は無いように思います。しかし独自に募集したとしても、入社に至るまでのプロセスを考えると独自での採用は非常に困難と言わざるを得ません。

岩永:今後のGICとの協業や展開についてお伺いしてもいいですか?
安田:外国籍(ミャンマー)社員の採用に限らず、育成や現地でのビジネスなど、協力できる分野は積極的に協業したいと考えています。

岩永:外国人材雇用で一番良かった点やこれから外国人を雇用しようと考えている企業様へのアドバイスがあればおねがいします。
安田:“混ぜる“効果は(良い悪いは別にして)必ず現れます。 それを変革のチャンスに出来るか否かだと思います。悪い反応も沢山出てきます。それを乗り越える覚悟があるのであれば、外国籍社員の採用をする目的を明確にし、現有社員へ“会社と覚悟”として伝えてから始められることをお勧めします。

岩永:最後に、当社の取組について聞かせてください。
安田:2020 年よりDiversity&Inclusion担当顧問を置き、多様な認知・価値観の受容と多様な働き方の実現を目指して各種施策を進行中です。今年からはDiversity&Inclusion(D&I)研修を全社員対象に開始しています。さらに、今年春には在籍している外国籍社員とそのOJT担当者に聞き取り調査を行い、課題抽出ならびに解決に向けた対応を実施中です。

安田 秀敏 

やすだ ひでとし

コンピューターサイエンス株式会社 代表取締役社長

1982年 コンピューターサービス(株)入社(現SCSK) 
1986年 コンピューターサイエンス(株)入社 
2008年 ナノシステム(株) (子会社)取締役社長就任 
2013年 コンピューターサイエンス(株)取締役就任 
2015年 コンピューターサイエンス(株)取締役副社長就任 
2016年 コンピューターサイエンス(株)代表取締役社長就任 

1962年 福岡県生まれ 59歳 
1986年 技術者としてコンピューターサイエンスに入社し技術者の中核リーダーとして活躍 
1991年 経営企画室長に抜擢され、経営の中枢として経営計画全般(事業戦略、人事戦略など) を担当 
2008年 M&Aにより買収したナノシステムの取締役社長に就任し経営管理体制を構築 
2013年 事業部門のTOPとして会社業績の向上に貢献 
2016年 代表取締役社長に就任し現在に至る 

岩永 智之 

いわなが ともゆき

グローバルイノベーションコンサルティング株式会社 代表取締役社長 

1984年 日本IBM入社 
2005年 中部地区日系IT会社で海外部門の責任者として就任 
2006年 ミャンマーでのビジネス開始 
2011年  GICグループを立ち上げ現在に至る 
専門はIT全般/海外進出(JICA/JETRO関連含む)、 
ミャンマーからのIT・特定技能を含む人材サービス全般 

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