
はじめに
ミャンマー在住の小林です。
本連載では、現地での生活を通じて得られる実感や空気感、ならびに実際に確認されている制度運用や実務上の変化を中心に、日本企業・関係者の皆様に向けて情報を共有しています。
今回は、海外就労者IDカード(OWICカード)を保有する労働者を中心としつつ、観光目的の渡航者および海外からの帰国労働者を含めた、出入国管理全体の運用厳格化について整理します。
送り出し機関を経由しない海外渡航者(OWIC保有者)への注意
― 海外出国手続きの運用厳格化について ―
ミャンマーにおいて、OWICカードを保有する労働者の海外出国手続きについて、既存規定の適用および運用が明確に厳格化されています。
本件は、新たな制度が創設されたものではなく、従来から存在していた出国許可・労働移動管理に関する規定が、例外なく適用される運用へと移行したものと整理するのが適切です。
特に、送り出し機関を経由せず、個人の計画により日本、韓国、シンガポール、タイ等へ海外渡航を行うOWIC保有者を中心に、ヤンゴン国際空港で出国できなかった事例が複数報告されています。
1.今回の措置の位置づけ
国家安全保障平和委員会(SSPC)労働省は、2026年1月11日夜、OWICカードを保有している労働者であっても、労働省の正式な許可を得なければ出国できないとする運用を改めて明確化しました。
この運用は、翌1月12日から即時適用されています。
OWIC制度の下では、従来から労働省による出国管理・許可の枠組み自体は存在していましたが、今回の通達以降、当該規定がより厳格かつ画一的に運用されるようになった点が特徴です。
2.変更前と現在の運用の違い
(1)従来の運用
従来は、以下のような運用が一般的でした。
- OWIC取得者が出国許可に関する申請をEメールで提出
- 申請済みであることを示す証憑を空港カウンターで提示することで出国できるケースが多かった
(2)現在の運用(2026年1月12日以降)
現在は、以下の運用が徹底されています。
- OWICカードを保有している場合であっても、労働省傘下の労働局による正式な出国許可が必須
- 許可を受けた者の氏名は、「Safe Migration」Telegramチャンネル上で一覧公表
- 当該名簿に名前が掲載されていない場合、出国不可
3.新たに求められている申請書類
現在の運用では、以下の書類を添えて、出国許可を申請することが求められています。
- 出国許可申請書(Cover Letter)
- パスポートおよびOWICカードのコピー
- 渡航先国の入国査証または滞在査証
- 有効な就労許可
- 航空券の写し
申請は紙書類で行い、ネピドー本部(Office No.51)への提出が必要とされています。
4.出国日の取り扱い(重要)
現在の運用では、
- 出国は、労働省が許可した日付に限定
- 許可された日に出国できなかった場合は、最初から再申請が必要
とされています。
出国許可日が確定しない段階で航空券の写し提出が求められる点については、実務上の負担が大きいとの指摘が現地でも聞かれます。
5.ヤンゴン空港で確認されている影響(現地報道を含む)
本通達が1月11日夜に発出され、翌12日から即時適用されたことにより、ヤンゴン国際空港では以下の影響が確認されています。
- 許可名簿に名前が掲載されていないとして、OWIC保有者が出国を拒否される事例が相次いだ
- 渡航準備を整えていた労働者が、航空券を無駄にし、海外雇用や研修計画に影響を受ける状況が発生
加えて、現地報道によれば、PV(観光)パスポート所持者についても影響が拡大しています。
- 往復航空券
- 渡航先国のビザ
- 滞在資金の証明
- ホテル予約
といった必要書類がすべて揃っているにもかかわらず、理由が明確に説明されないまま搭乗を拒否されるケースが多発しています。
特に、
- 初回の海外渡航となる男女
- タイへの渡航回数が多い渡航者
が影響を受けやすい傾向にあると報じられています。
6.帰国労働者に対する空港での届出義務化
さらに、1月15日付の発表として、労働省は、
- パスポート(PJ)
- 身分証明書(CI)
を所持して海外から帰国する労働者に対し、空港到着時にカウンターでの「報告(届出)」を義務付けると明らかにしました。
この報告を行っていない場合、将来の海外渡航許可申請時に、許可が認められない運用とされており、
- 出国時だけでなく
- 帰国時の手続きも、次回出国許可と連動する
点が大きな変更点です。
7.実務上の留意点
海外就労、人材派遣、受入に関わる企業・関係者においては、以下の点を前提とした対応が必要です。
- 本件は、送り出し機関を経由しない個人手配による海外渡航者が主な対象
- OWICを保有していても、出国は自動的に認められるものではない
- 観光目的(PV)であっても、書類が揃っていれば必ず出国できるとは限らない
- 帰国時においても、所定の届出を行っていない場合、将来の出国に影響する可能性がある
- ミャンマーでは、制度上の要件を満たしていても、最終的には空港を含む現場の裁量で判断されるケースが少なくない
- このため、現場判断を前提としたリスクを織り込んだ計画立案が不可欠
9.おわりに
今回の一連の措置は、海外就労者の出国・帰国・再出国を一体で管理する方向へ運用が明確に強化されたものと整理できます。
影響はOWIC保有者にとどまらず、観光目的の渡航者や帰国労働者を含め、出入国管理全体に及んでいる点に注意が必要です。
今後も、公式発表や運用状況の変化が確認され次第、本連載にて継続的に共有していきます。
※ 本記事は、現地報道および確認されている情報をもとに作成しています。
※ 運用内容は今後変更される可能性があります。