明けましておめでとうございます。
ミャンマー在住の小林です。
2025年の年末から2026年の年始にかけて、ミャンマーでは総選挙の第1フェーズが実施され、ヤンゴンの街も「いつもとは少し違う年末」の空気に包まれました。
一方で、市民の関心は必ずしも選挙一色というわけではなく、例年通り新年を迎える準備を進めながら、物価上昇への対応など、足元の生活をいかに守るかに向いているという印象も強く感じられます。

1. 3段階で実施される「総選挙」
2025年12月28日、2021年のクーデター以降、初となる総選挙の第1フェーズが実施されました。
今回の選挙は3回に分けて行われ、2025年12月28日、2026年1月11日、1月25日に順次投票が予定されています。
- 投票は全国330タウンシップのうち、軍政側が掌握している一部地域に限定され、第1フェーズでは全体のおよそ3分の1程度のタウンシップでのみ実施されました。
- 第2フェーズ(2026年1月11日)、第3フェーズ(同年1月25日)についても、治安上の理由などから投票対象外となる地域があり、全国一斉選挙とは言い難い形となっています。
第1フェーズの投票結果 国営メディアが2026年1月4日に公表した開票結果によると、親軍派の連邦団結発展党(USDP)が下院議席の約90%を獲得したとされています。また、28の選挙区では無投票当選も決まっており、USDPの大勝が伝えられています。
2. ヤンゴンで見えた「選挙の風景」と市民の距離感
ヤンゴンでは、総選挙開始に向けて主要道路沿いに国旗や選挙スローガンを掲げた看板が増え、警備にあたる警官や兵士の数も明らかに増加しました。国営メディアによる選挙関連報道も目立つようになっています。
投票日当日には、市内の一部投票所で有権者が列を作る様子も報じられました。
第1フェーズの投票率は50%を超えたとされていますが、2020年選挙時の約70%を大きく下回っています。今回から導入された電子投票については、「投票をボイコットすると処罰されるのではないか」「誰がどこに投票したかが管理されているのではないか」といった不安の声も市民の間で聞かれます。
3. 年末年始のヤンゴンの空気感
2025年末から2026年初めにかけてのヤンゴンでは、クリスマスや年越しのイルミネーション、各種イベントが例年通り行われました。ショッピングモールや人気エリアには多くの人出があり、特に若者を中心に「ささやかな非日常」を楽しもうとする様子がうかがえます。
- 選挙関連行事が行われるエリアや政府・軍関連施設の周辺では警備体制が強化され、渋滞や一時的な通行規制が発生するケースも見られました。
- 一方、ヤンゴン中心部の多くのエリアでは、日中の商業活動は概ね平常通りに続いており、市民は「政治的な緊張感」と「日常生活の継続」を同時に抱えながら年を越した印象です。
シュエダゴン・パゴダに隣接する人民公園(People’s Square and Park)では、政府主催のカウントダウンイベントが行われ、多くの市民が集まり、花火とともに新年・シュエダゴン・パゴダに隣接する人民公園(People’s Square and Park)では、政府主催のカウントダウンイベントが行われ、多くの市民が集まり、花火とともに新年を迎える様子が見られました。



人民公園で開催されたカウントダウンイベントの様子
- また、レストランやホテル、クラブなどで開催されたカウントダウンイベントの様子が、TikTokをはじめとするSNS上に数多く投稿されていた点も印象的でした。近年、ミャンマーのSNS利用はFacebookからTikTokへと重心が移りつつあるように感じられます。
- 1月4日は独立記念日の祝日で、同日には町内会などによるスポーツやゲームを中心としたイベントが各地で催されます。今年は国旗を掲揚している家が多く見られましたが、一部では「掲揚が事実上求められている」といった指摘もSNS上で見受けられました。
4. 選挙の裏側で続く、ヤンゴン市民の「生活防衛」
一方で、ヤンゴン市民の生活実感に近い話題としては、選挙よりも物価高や治安面への不安といった「生活に直結する問題」が依然として大きな比重を占めています。
電力
12月に入り、選挙を意識してかヤンゴン市内の停電は一時的に減少しており、特に夜間の停電は現在ほとんど見られません。ただし、国内の電力供給量が大幅に改善したわけではなく、暑気に向かう3月以降の状況については引き続き注視が必要です。
為替・物価
為替レートの管理を目的とした両替商の摘発や輸入規制によるドル需要抑制の影響もあり、チャット高の傾向が続いています。2026年1月時点では、1JPY=約25MMK、1USD=4,000MMKを下回る水準となっています。
一方で、輸入規制に伴う品不足の影響から、特に輸入品を中心に価格上昇が続いており、「何でも高くなっている」というのが現地の率直な声です。ただし、ガソリン価格については政府による価格調整の影響もあり、2,500〜2,600MMK/L程度で比較的安定しています。
夜間外出禁止の緩和
選挙直前の12月27日、クーデター直後から継続していた夜間の外出禁止(直前は午前1時から3時まで)が緩和されました。ただし、夜間の検問などを警戒し、多くの市民は引き続き深夜の外出を控えている様子です。
5. 日本企業にとってのポイント
ミャンマーに関わる日本企業や駐在員にとって、今回の総選挙は一つの政治的節目ではあるものの、直ちに治安や制度面が大きく改善する局面とは受け止められていません。
年末年始に合わせて駐在員を一時帰国させる企業も見られましたが、第1フェーズの投票日当日に大きな混乱が発生することはありませんでした。
今後は、選挙後の体制や政策運営の変化、その実務面への影響を注意深く見ていく必要がありそうです。 今回は少し長くなりましたが、以上とします。