1.基本方針作成の目的
近年、顧客や取引先による過度な要求や威圧的な言動が従業員の心身に深刻な影響を及ぼす「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」が社会問題化しています。厚生労働省や各自治体の「パワーハラスメント防止条例」等でも、カスハラへの対応が企業の責務として位置づけられつつあります。本マニュアルは、従業員を不当なハラスメントから守り、安心して働ける環境を整備するとともに、健全で持続可能な顧客関係を築くことを目的として策定するものです。
2.カスタマーハラスメントの定義
カスタマーハラスメントとは、顧客または取引先による、社会通念や取引慣行を逸脱した言動・要求であり、従業員の人格や尊厳を侵害し、業務の適正な遂行を妨げる行為を指します。
例として以下が挙げられます。
- 暴言・脅迫・人格否定的発言
- 長時間にわたる過度な叱責・執拗な要求
- セクシャルハラスメントに該当する言動
- SOGI※ハラスメント、その他ハラスメント、つきまとい行為 など
※「SOGI」(ソジ)は、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字をとった略称 - 業務範囲を超えた不当な要求や金銭要求
- SNS等での過剰な誹謗中傷
3.カスタマーハラスメントに対する基本方針
- 当社は、従業員の安全と尊厳を守ることを最優先とする。
- 顧客の正当な意見・要望には真摯に耳を傾け、改善に活かす。
- 社会通念を逸脱した要求や言動については、毅然とした態度で対応する。
- ハラスメント行為を受けた従業員が不利益を被らないよう、会社として保護・支援する。
4.顧客対応の考え方
(1)心構え
- 顧客対応は冷静かつ誠実に行う。
- 個人で抱え込まず、上司や相談窓口と連携する。
(2)クレーム初期対応
- まずは顧客の意見を傾聴し、事実確認に努める。
- 可能な範囲で迅速に対応策を検討し、誠意をもって説明する。
- 不当な要求がある場合は「会社として対応できない」旨を明確に伝える。
(3)顧客等の権利の尊重
- 正当な苦情・意見は真摯に受け止め、改善に反映させる。
- 不適切な言動があったとしても、相手の人権を侵害するような対応は行わない。
5.カスタマーハラスメントへの対応
(1)判断基準
- 社会通念上、過度で不合理な要求であるか
- 従業員の心身に支障をきたす可能性があるか
- 業務運営に著しい支障を及ぼすか
(2)対応フロー
- 従業員がカスハラを受けた場合:記録を残し、上司・相談窓口に速やかに報告
- 一次対応:上司または責任者が顧客と接触し、事実確認
- 判断:不当行為である場合、毅然とした態度で対応を打ち切るか制限
- 必要に応じ外部機関(警察、弁護士等)と連携
- 再発防止:対応事例を社内で共有し、教育に活かす
6.社内体制整備
- 相談窓口の設置:従業員が匿名でも相談可能な窓口を設ける。
- 研修実施:顧客対応スキルやカスハラ対応に関する定期研修を行う。
- 再発防止:発生事例を分析し、マニュアルの改訂・共有を行う。
- 従業員支援:メンタルヘルス相談や産業医との連携体制を整える。
7.企業間取引での対応
- 当社は取引先に対しても、カスハラ防止を基本姿勢として明示する。
- 契約書や取引基本契約に「不当な言動の禁止条項」を盛り込み、違反があった場合の対応(取引制限・契約解除等)を明確化する。
- 取引先との間で発生したカスハラについても、当社相談窓口で対応し、必要に応じて経営層が介入する。
以上、本基本方針は、従業員と顧客・取引先双方にとって健全な関係を築くための基本的な指針とする。全社員が理解し、日常業務で実践することを求める。
2025年8月26日