オフショア開発先としてベトナムを選定する日系企業は多いですが、現在オフショア開発先の「ポスト・ベトナム」として最も注目されているのが、「アジア最後のフロンティア」と呼ばれ、世界から注目されているミャンマーです。

一方、ミャンマーといえば、2021年2月に発生したクーデターが記憶に新しい方も多いかもしれません。政情が不安定なミャンマーはオフショア開発先として本当に適切なのか?今後のリスクはどう考えればよいのか?などが気になる方も多いでしょう。

そこで、本記事の冒頭では、クーデターを含めたミャンマーの現状と政治・経済の今後の見通しをお伝えします。その上で、ミャンマーオフショア開発のメリットとデメリットについて、ポイントを絞ってご案内していきます。

最新情報も含めて、オフショア開発先としてミャンマーが妥当かどうかを判断するに足る情報が5分程度で得られるようにコンパクトにまとめてみました。ぜひご覧ください。

ミャンマーの情勢

クーデターの影響

2021年2月1日に国軍がクーデターにより全権を掌握。国軍の弾圧による累計死者数は2,000人を超え、15,000人以上が不当に逮捕されています。

クーデター直後のミャンマーでは、インターネット・電力・銀行・一般生活商店などの生活インフラが一時麻痺していましたが、現在では大きく改善されており、特に最大都市ヤンゴンやマンダレーにおいては**ほぼクーデター前の状況に戻っております**。

経済活動も以前と同様に順調に再開しております。

2024年に総選挙が予定されており、大きな政治・経済的なマイルストーンになりますが、民主主義と以前の経済成長を取り戻すべく、多くのミャンマー国民が前向きに各種活動に取り組んでおり、これからの展開に期待されます。

ミャンマーの政治・経済の今後の見通し

「アジア最後のフロンティア」として世界の注目を集めるミャンマー。多くの外資系企業(日系企業含む)が進出していることは言うまでもありませんが、新型コロナ感染症、そしてクーデターによる危機に直面しながらも、多くの企業はミャンマーにおけるビジネスの継続、あるいはさらなる拡大を模索しています。

2022年5月からミャンマーの対日輸出は大きく成長。前年同月実績を7割近く上回り、プラス成長が継続しています。PMI(製造業購買管理者指数)も2022年4月には50を上回り、新規受注・生産高・雇用のいずれも拡大方向にあります。また、新型コロナウィルスも日本と同様な状況で、経済活動に大きな支障はきたしていません。

コロナやクーデターといった環境の変化によってミャンマーからの撤退を選択した企業は極めて少数であり、ミャンマーという国の長期的な潜在能力を見添えて、事業継続を決断した企業が多くあるのも事実です。クーデターの状況も落ち着きを見せているため、今後のミャンマー経済はさらなる上昇に転じる可能性は比較的高いと考えられます。

ミャンマーオフショア開発の2つの強み(メリット)

人月単価の低さ

以下の表はミャンマーおよびオフショア開発先としてメジャーな国々のエンジニアランク別の人月単価の相場感です(2022年現在)

プログラマーSEブリッジSEPM
ミャンマー30万円前後40万円前後50万円前後60万円前後
ベトナム35万円前後45万円前後55万円前後65万円前後
フィリピン35万円前後50万円前後70万円前後70万円前後
インド35万円前後50万円前後70万円前後90万円前後
中国45万円前後55万円前後75万円前後100万円前後

オフショア開発は80年代の中国から始まり、人件費高騰に伴ってインド、ベトナムとオフショア開発の中心地が変遷してきました。また、フィリピンやインドは英語力の高さを強みとしており、特に欧米企業のオフショア開発先としてメジャーな国です。

ミャンマーのエンジニアの人月単価は他国と比べて低水準の人月単価を維持しており、オフショア開発先の「ポスト・ベトナム」として注目されています。ミャンマー人は日本語能力も高く、国民性も日本人に近いため、日本企業のオフショア開発先としては極めて魅力的な国の一つです。

国民性と日本語能力の高さ

ミャンマーにおいて日本語学習の人気が高いこと、ミャンマー語(ビルマ語)と日本語の語源が同じ(例えば語順は「主語・目的語・動詞」など)こともあり、ミャンマー人の日本語能力はアジア諸国と比較しても極めて高いレベルにあります。

また、日本語の習得にあたっては、上述の文法の近さもありますが、ミャンマー人の真面目で勤勉な国民性も少なからず影響していると思われます。

真面目さや勤勉さに加えて、ミャンマー人は協調性やチームワークを大切にし、自己主張をあまりしないという特徴もあり、総じてミャンマー人は日本人と相性がよいと言われています。実際に日本のクライアントからも「まるで日本人と一緒に働いているようで、一緒に働きやすい」と言われることも多いです。

オフショア開発で起こるトラブルの多くが、発注元とオフショア開発先の言語や文化・商習慣の違いを起因とするものが多いことを鑑みると、日本企業のオフショア開発先としてミャンマーは最適だと言えるかもしれません。

ミャンマーオフショア開発における2つの懸念(デメリット)

ベテランITエンジニアの不足

ミャンマーはオフショア開発先としては中国やベトナムと比べると後発であることや、ミャンマー人の平均年齢は28歳(2022年現在)と非常に若いこともあり、ブリッジSEやPMを担当できるレベルの人材は現時点では多くはありません。そのため、特に大規模なプロジェクトになるとプロジェクトを任せられるミャンマー人材はかなり限られてくるという現状があります。

一方で、ミャンマーは国としてもIT人材の育成に力を入れており、毎年工科系大学やIT系大学から多くの優秀な人材が輩出されています。また、当社をはじめとして10年以上ミャンマーオフショア開発の経験を培っている日系企業も増えてきており、30代~40代のブリッジSEやPMクラスの人材も確実に育ってきています。ベテランITエンジニアの不足問題は徐々に解消されつつあると言ってもよいでしょう。

政情の不安定さ

本記事の冒頭に記載したように、政情の不安定さはミャンマーをオフショア開発先に選ぶ上での懸念事項になる点は事実でしょう。一方、2022年8月現在、既にクーデターからは1年半以上が経過し、政治情勢や治安状況は落ち着きを見せており、さらなる政治体制変更によるリスクは大きく低下しています。

また、実際にミャンマーオフショア開発を10年以上行っている当社でも、クーデターやコロナ禍でも問題なくシステム開発業務を遂行できています。

技術力の成長や高い日本語力をはじめとして、政情不安などのリスクを補って余りある、非常に高いポテンシャルのある国がミャンマーであり、そのようなポテンシャルがあるからこそ、オフショア開発の「ポスト・ベトナム」と呼ばれているのではないでしょうか。


ベトナムオフショアとの比較

ミャンマーオフショアの強みベトナムオフショアの強み
コスト(ベトナムの70〜80%)ベテランITエンジニアの多さ
日本語能力の高さ(通訳や日本語ブリッジが必要ない)プロジェクト経験
豊富な技術者やIT系学生情勢の安定性
日本/日本人との親和性の高さ

ミャンマーオフショア開発企業一覧

日系企業でミャンマーオフショア開発の経験を一定程度(7年以上)持ち合わせているシステム開発会社を以下に掲載します。

GICは10年間にわたってミャンマーを中心にオフショア開発を行って参りました。開発プロジェクトにアサインされるメンバーはPM・PLクラスはもちろん、ミャンマー現地のPGクラスまでほぼ全員が日本語の対応が可能です(GICの日本語能力や技術レベルについては こちら をご覧ください)。
GICはオフショア開発業界内でも類を見ない日本語能力の高さを活かすことで、日本語の仕様書をベースに、日本語でコミュニケーションをしながらオフショア開発を進め、オフショア開発で陥りがちなコミュニケーションの齟齬を最小化しつつ、オフショア開発のメリットである「低コスト・短納期」に加えて「高品質」なシステム開発を実現しています。GICのオフショア開発に興味のある方は、ぜひお気軽にお問合せください。

当社は現在注目されているミャンマーにおいて10年以上にわたるオフショア開発経験があり、難易度の高い多くのシステム開発プロジェクトを成功に導いてきました。約300名の優秀なミャンマー人ITエンジニアのうち、半数以上のスタッフが日本での就業経験もあり、日本語も堪能です。トレードオフになりがちなシステム開発における「低コスト・高品質」を両立させるGICのオフショア開発の特長をぜひご覧ください。