GICM代表の小林です。
今回は、みなさんの関心が高いと思われるミャンマーの政治・治安情勢についての最新情報です。
2021年2月1日に発生したクーデターからちょうど4年が経過しました。軍評議会は非常事態宣言の7回目の延長を実施する一方、2023年10月27日に開始された反政府勢力による合同作戦により、各地で国軍が劣勢となるなど事態は昨年1年で大きく動いています。(更新年月:2025年02月01日)
1)非常事態宣言、7回目の延長
前日の1月31日、ミャンマー軍評議会(SAC)は非常事態宣言を半年間延長すると発表しました。憲法上は1年間の非常事態宣言後に半年毎に2回まで延長できることになっていますが、総選挙を行える状況になっていないことを理由に7回目の延長を行いました。
非常事態宣言解除後は半年以内に総選挙を実施することが憲法で規定されているため、総選挙は最短で今年の11月と言われています。総選挙の準備として昨年10月に国勢調査が行われましたが、実際に調査できたのは国土の半分以下といわれており、本当に今年に実施できるかは不透明です。
2)内戦の激化
2023年10月27日にアラカン軍(AA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)、タアン民族解放軍(TNLA)の3兄弟同盟が、事実上国民統一政府(NUG)に協力して大規模な攻勢を図り、合同攻勢作戦を行ったことにより内戦状況は一変しました。
2024年7月には、MNDAAがシャン州北部ラショー市に拠点を置くミャンマー軍北東軍管区本部、同12月にはAAがラカイン州アン郡区にあるミャンマー軍の西部軍管区司令部を制圧し、国内に14ヶ所ある管区司令部のうち2つが陥落するという、これまで国軍が経験したことがない事態となっています。
現在、AAは、ラカイン州南端のグワ市まで制圧した後、ラカイン州と境界を接するエーヤーワディ地域まで南下して戦闘を継続しています。ヤンゴンから一番近いビーチリゾートとして知られているにチャウンダービーチのホテルは営業を停止しており、1月には日本大使館から同地区への渡航を控えるように注意喚起が行われました。
マンダレー周辺でも、PDF(国民防衛軍、NUGの軍事部門)がマンダレー周辺部を制圧、同地区への渡航も控えるよう、日本大使館から注意喚起されています。
地方部と比べて、ヤンゴンではまるで別の国のように普段と変わらない「日常」が送られています。

3)徴兵法細則発表に伴う国外出国への影響
2024年2月に突然発表された徴兵制開始により、4月以降これまで毎月男性の徴兵が実施されてきました。2025年1月23日に徴兵法細則が発表され、状況が大きく変わろうとしています。
細則では、徴兵期間の免除・短縮・猶予の申請手順、免除・猶予申請中および召集令状を受領したものの海外渡航の禁止、本人が出頭しない場合は家族を取り調べることができること、などが規定されています。細則の公表に伴い、これまで徴兵対象となっていなかった女性の徴兵候補者リストの作成が一部タウンシップで開始されていること、昨年5月から23歳から31歳までの男性に対して停止されていた海外就労許可証(OWIC)の発行停止対象年齢が徴兵対象の18歳~35歳まで拡大されたなどが、地元メディアで報じられています。
技能実習・特定技能を中心に急速に増加していた、ミャンマー人の日本渡航・就労にブレーキがかかることが懸念されます。

当社では、ミャンマーの最新ニュースや政府方針の影響分析に加え、現地ネットワークを駆使した独自の視点で、他では得られないミャンマー市場に関する重要な情報を随時更新しています。市場の動向を把握し、ビジネスに活用できる情報を得るために、ぜひご覧ください。