第2話 震度6弱、来日直後の試練―宮崎地震を経験して

前回は、私が宮崎に来るまでの歩みを中心に、自己紹介をさせていただきました。今回からは、いよいよ宮崎ニアショアセンターが産声を上げていく、2024年7月末から8月にかけての日々をお伝えしていきます。人もモノも何も無いゼロからスタートしたセンターが少しずつ形になっていく舞台裏を、もう少し丁寧にたどってみたいと思います。喜びと緊張が入り混じった、忘れられない日々でした。

がらんとした190平米から、すべてが始まった

2024年7月22日、宮崎ニアショアセンターとして借り受けた物件に、私たち3人が初めて足を踏み入れました。本社人事部長の竹迫さん、そして私とともに宮崎に赴任するもう一人の日本人、藤原さんです。

藤原さんは、ミャンマーの現地法人(GICミャンマー)立上げの頃、現地の新入社員に日本語を指導していた、いわば「生え抜き」のメンバーです。その後、一度は日本に戻りGICを離れていたのですが、今回の宮崎立ち上げにあたって声がかかり、日本語教育の経験を買われて、私とともに宮崎へ赴任する唯一の日本人として戻ってきてくれました。心強い同志です。

部屋の扉を開けると、約190平米のガランとした空間だけがありました。机も椅子もなく、壁も床も真っ白なままで、建材のかすかな匂いだけが漂っています。「さあ、始めようか」と3人で顔を見合わせたものの、これからどのような計画で拠点づくりをしてゆくのかさえ何も聞かされていなかった私は、竹迫部長の説明を聞きながら、「これからどのような展開になるのだろうか」と、ただただ不安な気持ちで、後戻りのできない一歩を踏み出してしまったという、少しの後悔も確かに感じていました。

短くても長い、準備の日々

翌23日から、事務所開設に向けた動きが始まりました。事務机や椅子などの什器の搬入。社員寮への家具・家電の搬入、エアコン取付けの立会い。そして7月25日、早速ミャンマーからの第一陣となる社員3名とそのご家族が宮崎空港に到着しました。異国の地に降り立った彼らの、緊張と期待が入り混じった表情は、数日前の私自身の不安な気持ちと重なりました。小さな子供たちもいて、その表情を見ながら、この人たちの生活と将来を預かるのだという実感が増していくのを感じました。その翌日からは、住民票の転入届や銀行口座の開設と、生活の基盤を整える作業が続いてゆきました。

7月中に、事務所の電気工事が終わりましたが、届いた机・椅子など什器類は組み立てられないまま置かれていました。竹迫部長は8月1日の開業日を見届けた後、役目を終えたと言ってさっさと東京へ帰って行きました。そして、残された青柿・藤原と来日したばかりの若いミャンマー人社員3人にとって最初の仕事となったのが、机や椅子、パーテーションの組立てです。ITエンジニアとして日本へやってきたはずの3人にとっては、まさか日本での初仕事が机と椅子の組立てだったとは、さぞかし面食らったことでしょう。それでも、言葉は十分に通じなくとも、互いに汗を拭いながら力を合わせて作業を進めていくうちに、いつの間にか年齢も国籍も関係ないOneチームの空気が生まれていました。何もなかった部屋に、少しずつオフィスらしい輪郭が生まれていく様子には、未来に向かうかすかな希望の灯を感じました。

大淀川の花火と、8人の宴

慌ただしい中での最初の週末、8月3日にセンター初の社内イベントとして「みやざき納涼花火」の鑑賞会を開きました。会場は、8月末に来日予定のメンバーの寮として確保していた、シャトーモリオカ末広の1112号室。藤原さんと、来日第一陣の3名の社員、そのご家族を合わせて8人が集まりました。

数日間、汗を拭いながら机と椅子の組み立て作業を続けていた私たちにとって、その夜はまるで別世界でした。大淀川で打ち上がる花火が、11階の窓からちょうど正面に見え大迫力です。近所のドンキで購入したお酒やおつまみを床に広げ、子どもたちも一緒になって、賑やかなひとときを過ごしました。ミャンマーの言葉と日本語が入り混じる笑い声を聞きながら、期待と不安が、じんわりと胸に広がっていったのを覚えています。センターとしての最初の「行事」が、宮崎の納涼花火の日と重なった偶然に、明るい未来が待っているような予感も少し感じました。

机の下で肩を寄せ合って

花火の余韻も冷めやらぬ8月8日、宮崎で震度6弱の地震が発生しました。大きく、ゆっくりとした揺れが長く続き、まるで船に乗っているような感覚でした。来日してまだ数日の3名のミャンマー人社員は、何が起きているのか分からず、どうしていいか分からない様子でした。私はとっさに「机の下に潜れ!」と声をかけ、全員で、机の下に潜り込みました。揺れの長さはおそらく数秒間だと思いますが、感覚的には1分以上も揺れていたような長い揺れでした。揺れが収まった後の安堵と恐怖感が入り混じったような彼らの表情に、異国から来た彼らの安心と安全を守る責任の重さを改めて感じました。

宮崎では実に20年ぶりという規模の地震だったそうです。来日して間もないメンバーにとっては、さぞ恐ろしい体験だったと思いますが、今こうして振り返り、大事に至らなかったから言えることですが、災害の多い日本での生活の「洗礼」を早い段階で受けられたことは、ある意味、運が良かったのかもしれないとも思います。

少しずつ、日常を取り戻しつつあるところへ台風が追い打ち

その後8月19日には、GIC本社の役員と私たち5人とがリモート会議で繋がり、記念すべき最初のキックオフリモートミーティングを実施しました。事務所什器の組立て作業、センター初の納涼花火イベント、そして、地震という思いがけない試練を共に経験したことで、メンバーとの間には不思議な結束のようなものが芽生えていたように思います。8月24日には第二陣となる11名が来日し、ミャンマー人社員は合計14名になりました。ところが、この来日のタイミングでも、今度は大型の台風10号がメンバーたちを出迎えることになります。「雨降って地固まる」ではないですが、地震に台風にと、来日早々、宮崎の洗礼を存分に受けたメンバーたちでしたが、そんな試練を重ねながら、少しずつ、宮崎での暮らしと仕事のリズムができあがっていきました。

次回は、この第二陣・第三陣の来日と、組織づくりが本格化していく様子をお伝えします。どうぞお楽しみに。

 

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                    登壇者プロフィール 

大学卒業後、株式会社カナデンに入社。セールスエンジニアとして三菱電機の産業メカトロニクス製品(CO2 レーザー加工機、産業用ロボット等)の拡販・導入を担当。
その後、キャリアチェンジを目指し大手生命保険会社へ転職。
営業支部長として労働集約的組織のマネジメントを実践経験。

2003 年、中堅コンサルティング会社に入社。コーディネーターとして東京 12 年・タイ 8 年、計 20 年間にわたり日系製造業200社以上の工場診断に従事。  

2024 年 7 月、グローバルイノベーションコンサルティング株式会社入社。

2024 年 8 月、宮崎ニアショアセンター長に就任(現職)。
海外勤務で外国人と共に仕事をした経験を活かし奮闘中。

                         

                           青柿 光祥                        

              宮崎ニアショアセンター長

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